相模原市内新交通システム導入計画関連調査報告書概要版 

 

1.はじめに

 相模原市は、平成元年度より5年間にわたり新しい交通システムの調査・研究を行ってきました。平成6年6月には新しい交通システム導入検討協議会(会長:太田勝敏東大教授)が発足、同システムの調査・研究を踏まえて導入すべきかどうかの協議を重ねた結果、平成8年4月には舘盛市長に「市の将来像(自立性の向上、環境負荷の少ないまちづくり)の実現をはかり、豊かな市民生活を享受するために、快適で魅力ある新しい交通システムが必要」と、同システムの導入を促す提言書を提出しました。

 平成9年9月からは過年度調査に基づき、庁内の関係各課の管理職以上をメンバーとする「新しい交通システム導入検討会」で協議を続け、平成10年11月に開催された総合交通対策シンポジュウムにおいて中間報告として発表されました。

 平成9年8月都市産業研究会は、小川市長に「自立都市にむけての政策提言」を提出しましたが、この中で、まちづくりの推進体制のひとつとして新交通網の整備を提言しました。新しい交通システムは、都市産業研究会にとって大きな研究テーマのひとつです。今後、研究を進めるにあたり、実物を目で見て試乗体験をすることが重要であると考え、国内で運行されている新しい交通システムや実験線を視察してきました。

 市は主に、ゴムタイヤ式新交通システム、ガイドウェイバス、LRT、路面電車、リニアメトロの5機種をモデルとして取り上げ、調査・研究を進めていますが、都市産業研究会としては、新たな視点からHSST磁気浮上式輸送システムをモデルとして取り上げ調査を行い、報告書として取りまとめました。

 

2.相模原市の交通の現状と課題の整理

(1) 相模原市における交通の現状

相模原市内の道路の混雑状況をみると、相模原町田線、相模原茅ヶ崎線および町田厚木線は混雑度が1.5を越えており、日常的に大量の交通需要が生じ、市内各所においては激しい交通混雑などの問題を招いているのが現状です。

鉄道は、JR横浜線および小田急線が市域の外縁部を通っているため、市中心部及び西部地区が鉄道利用者にとって不便地区となっています。バス路線は主に主要鉄道駅を起点とした鉄道端末交通機関として設定されています。

 鉄道とバスを合わせた公共交通機関の利用率は約17%と低い状況にあります。これは自動車交通量の増加が、公共交通機関の機能および利用率の低下を促進しているものと考えられます。

図1 主要路線における混雑状況

(出典:「相模原市の新交通S計画について」)

 

図2 現在の公共交通機関網

(出典:「さがみはらの将来交通」)

(2) 課題の整理

イ.道路交通混雑の緩和・解消

ロ.公共交通機関の機能低下の改善

ハ.交通不便地域の解消

ニ.環境対策

 

(3) 交通問題解決の方向性

 相模原市における現状とそのニーズを考慮しますと、自動車交通の負担を軽減し、交通問題を解決する一方策としては、新たな公共交通機関(公共交通システム)を導入することが、適切であると考えられます。

 また、公共交通システムは、導入される都市規模によって、適正な交通機関の種類とその交通機関の果たす役割が決まっています。表1は各種交通システムが都市交通に果たす役割を示しています。

 相模原市の人口は現在約59万人であり、都市規模としては中都市となります。この中都市規模においては、都市内幹線交通としては中量交通システムが、補助幹線交通としては小量交通システムが適しており、これらによって都市内交通体系が形成されることになります。しかし、現在の相模原市における都市内交通機関は、小量交通システムであるバスのみであり、各種交通機関の特性を生かした21世紀に向けての相模原市総合都市交通体系を構築するためには中量交通システムの導入が不可欠ではないかと考えられます。

表1 各種交通システムが都市交通に果たす役割

都市規模

公共交通の種類

大都市

中都市

小都市

人口

60万人程度以上

人口

約60〜10万人

人口

約10万人以下

大量交通システム

通勤電車等

幹線交通

----------

----------

中量交通システム

モノレール、ゴムタイヤ式新交通、HSST等

補助幹線交通

(幹線網の中間地域、郊外住宅団地、新開発地からの鉄道アクセス等)

幹線交通

----------

小量交通システム

バス等

・幹線、補助幹線へ客を集めてくる培養線

・幹線、補助幹線の隙間を通る都心、副都心へのアクセス

補助幹線交通

(都市内巡回線や都心アクセス)

幹線交通

 

補助幹線交通

(参考:「都市交通の話」天野光三、技報堂出版1990.5)

 

 中量交通システムとは具体的には「新しい交通システム」の範疇で示されるもので、今後導入される新しい交通システムは、21世紀の多様化する社会ニーズすべてに応えられる交通システムでなければなりません。そこで、新しい交通システムにおいて求められるシステム要件として、

−環境性

−経済性

−安全性

−路線適合性

−先進性

を重視して取りあげ、これらの要件を十分に満たすことのできる交通システム導入の検討を進めていくべきであると考えます。

 

3.HSSTの現状と導入メリットについて

(1) HSSTの現状

 HSSTは日本航空株式会社および名古屋鉄道株式会社を筆頭株主とするエイチ・エス・エス・ティ開発株式会社が開発し、日本国内ならびに海外でも販売を進めている常電導磁気浮上式のリニアモーターカーです。既に技術開発を完了し、関係法規も整備されております。運輸省では、HSST方式による鉄道の事業認可申請があれば法規に基づき認可する体制にあります。HSSTの導入に関する調査・プロジェクト等の現状は次のとおりです。

・愛知県が東部丘陵線(藤が丘〜八草間約9km)へのHSSTの導入を検討されております。これを受けて政府は平成11年度予算に当該路線の着工準備費を盛り込みました。

・広島県が「広島空港軌道系アクセス調査研究委員会」を設置し、広島空港アクセスの導入検討調査を行っており、平成13年の免許取得を目指しておられます。

・神奈川県横浜市ドリームランド線再開に関し、ダイエーグループがHSST導入の為の基礎調査を実施し、平成7年12月に既存のモノレール路線免許からHSSTに変更する「事業基本計画変更認可」を運輸省から取得済みです。

・海外では米国、ブラジル、メキシコ等にHSSTの導入計画があります。

 

(2) HSSTの特長

環境にやさしい

 HSSTは従来の鉄道のように車輪の回転で走行するのではなく、マグネットで浮上しリニアモーターによって走行します。つまり、車両とレールは接触せず、浮いたままの状態で走行するため騒音や振動が少なく、また、車輪の摩耗によって生じる鉄粉やゴム粉塵も発生しません。夜間や早朝でも環境にやさしく静かに走行できます。

安全な乗りもの

 HSSTは車両下部にあるモジュールが、しっかりと軌道のレールを抱え込む構造になっているため、脱線、転覆のおそれがありません。

経済性が抜群

 HSSTは車両が軽量で、軌道側にかかる荷重も分散されるので、レールや軌道に大きな負担がかかりません。そのため、支柱などの構造物がスリムにでき、建設コストが低減されます。また、車両とレールが接触しないため、車両、軌道両方のメンテナンス費用も大幅に低減できます。

多様な路線に適合できる

 HSSTは停車中でも浮上でき、発進、停止がスムーズな優れた高加減速性能で駅間距離の短い路線の設定も容易にでき、効率の良い運行ができます。また、雨や雪にスリップすることもなく、卓越した登坂能力や小さな曲率半径により、起伏の多い地形やカーブの多い複雑な地形の路線などにも適用できます。

 

(3) HSSTの導入メリット

相模原市にとってのメリットには、「相模原市民」にとってのメリット、「事業主体」にとってのメリット、「社会環境・経済」にとってのメリットの三つの側面からメリットが考えられます。

相模原市民にとってのメリット

 利用者にとっては、

騒音、振動が小さく、乗り心地、快適性に優れています

 

降雪、積雪に強く、運行における信頼性や定時性の確保ができます。

 既存の鉄道との連絡駅では橋上駅を想定しているため、乗り換えがスムーズにできます。

 沿線住民にとっても、

騒音、振動が小さいことは、生活環境に影響が他のシステムに比べて少ないものとなります。

 他のシステムでは発生する

車輪の摩耗による鉄粉やゴム粉塵が生じず、住民の生活環境保全に優れております。

事業主体にとってのメリット

 

支柱などの構造物がスリムにでき、建設コストの削減に大きく貢献できます。

 急勾配やカーブの多い地形に対しても自由度の高い路線計画が可能です。

 

導入空間が少なくてすむため、駅前周辺などの限られたスペースに対しても容易に導入が可能です。

 

車両とレールが接触しないため、軌道、車両などのメンテナンス費用が大幅に低減できます。

社会環境・経済にとってのメリット

 「

環境にやさしい」交通システムの導入により、環境対策に取り組む相模原市のイメージが向上されます。

 国道16号線および市内の幹線道路の混雑緩和に寄与します。

 先進性、話題性に富んだシステムの導入により、さらなる集客効果を生み地域の産業振興に大きく貢献いたします。

 これらを総合いたしますと、HSSTを導入することは、相模原市における都市軸を形成し、大規模な開発にも対応する公共交通機関網を強化する有力な手段であると考えます。その独創性と先進性で21世紀の社会ニーズに応える交通システムであるHSSTは、相模原市がめざしている「躍動し 魅力あふれる交流拠点都市」づくりを実現できる交通システムでもあると考えております。

 

4.導入空間の検討

 新交通システムを道路上空に導入しようとした場合、「ガイドウェイ・バス・システム設置基準(案)昭和50年7月、建設省等」を準用することになっておりますが、これによりますと軌道幅員(5.25m)、および側方空間(6.0m)から決まる物理的に可能な道路幅員は、5.25+2×6.0=17.25m→20mです。しかし、計画幅員が20mまたは22m以上であっても、一般的には軌道構造物の脚柱が設置できるだけの十分な広さの中央帯幅員を確保していることはほとんどなく、軌道の導入に伴い中央分離帯の拡幅、横断構成の変更または道路の拡幅等が必要となります。ここでは、HSST、新交通(側方案内方式)およびモノレールについての導入空間の比較を行うこととします。

 道路は第4種第1級道路とし、道路幅員は「高架方式で新しい交通システム導入にあたっては、原則として25m以上の都市計画道路が必要である。(新しい交通システム導入計画検討調査報告書H4.3 相模原市)」となっていることから、25mとします。

イ.計画道路の横断構成

 計画道路の幅員構成は下図のようになっています。この図からも分かるとおり、新交通システム等の軌道を導入しない場合には、中央帯幅員は1.0mとなっております。

図4 幅員25mの場合の標準幅員

ロ.中央帯幅員の考え方

 「ガイドウェイ・バス・システム設置基準(案)」によりますと、軌道は原則として道路の中央の上空で、中央分離帯に支柱を建てると記述されています。この場合の中央帯の幅員構成は図5に示すとおり、中央帯側の側方余裕を0.75m、ガードレール等の支柱防護工スペースとして0.50m、支柱の標準の直径を1.50mのとき、中央帯幅員を原則として4.0mとしています。したがって、25m道路の中央帯幅員を拡幅する必要が生じます。

図5 中央帯の幅員構成

 

(1) HSSTによる導入空間の検討

検討に際し、次の事項を前提条件として設定します。

イ.支柱の幅員 HSSTでは橋脚スパン20mの場合、支柱の幅員は1.0mとしているため、1.0mで設定します。

ロ.防護工設置幅 中央帯部分は0.5mで設定します。

ハ.側方余裕 0.75mで設定します。

ニ.防護柵 ビーム型防護柵(ガードレール、ボックスビーム)とします。

ホ.車線幅員 1車線3.25mで設定します。

 以上の考え方によると、中央帯幅員は下図のように3.5mとなります。

 なお、「ガイドウェイ・バス・システム設置基準(案)」によりますと、支柱の直径が1.5m未満の場合中央帯幅員を4mとしなくともよい旨の定めがあり、HSSTの場合はこれに相当しますので、3.5mに拡幅すれば良いことになります。

図6 支柱幅員1mの中央帯幅員

前項の中央帯の考え方により、道路幅員構成を行うと図7のようになります。

図7 HSST導入時道路横断構成図

 この結果、4車線の25m道路では歩道幅員が3.75mとなり、車線幅員の変更等を行わなくても、第4種第1級の歩道の既定値3.5mを確保できます。

 

(2) ゴムタイヤ式新交通システムによる導入空間の検討

 前項と同様の道路幅員(W=25m)にモノレールを導入した場合の横断構成について検討します。

(省略)

 車線幅員の変更等を行わないと、第4種第1級の歩道の規定値3.5mが確保できません。車線、歩道の縮小または道路幅員の拡幅が必要となります。

 

(3) モノレール(跨座式)による導入空間の検討

 前項と同様の道路幅員(W=25m)にモノレールを導入した場合の横断構成について検討します。

(省略)

 この結果、車線幅員の変更等を行わなくても、第4種第1級の歩道の規定値3.50mを確保することができます。

(4) HSSTと新交通システム、モノレールの導入比較

表2 導入空間の比較

HSST

ゴムタイヤ式

新交通システム

モノレール

道路構造令

支柱幅員

1.0m

2.0m

1.5m

防護工設置幅

0.50m

0.50m

0.50m

0.50m

側方余裕

0.75m

0.75m

0.75m

0.75m

車線幅員
(2車線)

3.25m

3.25m

3.25m

3.25m

歩道幅員

3.75m

2.75m

3.50m

3.50m

植樹帯

25m道路への導入の可能性

道路に導入可能であり、歩道幅員も3.75mまで拡幅できる。

歩道幅員が基準を満たせない。

道路拡幅等の対策が必要。

道路に導入可能である。

総評

 

 導入空間についての検討の結果、HSSTとモノレールについては25m道路に規定どおりの幅員で導入可能ですが、ゴムタイヤ式新交通システムについては歩道または車道幅員の縮小あるいは道路拡幅等の対策が必要となります。また、HSSTでは歩道幅員を広く取ることができます。

 

5.導入ルートの検討

(1) ルート選定の考え方

 市の「新しい交通システム導入検討会」で示された基本ルート(相模大野駅〜麻溝台・新磯野地区〜上溝駅〜市役所〜相模原駅)でもHSSTは十分にその能力を発揮できますが、これをベースに一層の地域開発効果を図るために、前項までに検討したHSSTの特長をより生かしたルートの選定を試みました。具体的には、

・基本的には建設費がもっとも低廉で、用地取得等の障害が少なく、したがって実現性のもっとも早いルートを考える。

・駅との接続については、急勾配の線形が可能で軌道等の構造物が小さくてすむHSSTを用いることにより、高架方式で乗り入れることとし、建設費の増大を防ぐ。

・上溝駅付近で厳しい曲線部が避け難い市の案に対し、横山公園を通過することにより無理な線形を回避する。

・道保川沿いの市道を活用し、麻溝台方面へ抜けることにより、同方面の開発・活性化につなげる。

・上溝駅〜橋本駅のルートについても検討する。

等で、次の二つのルート案を選定しました。

Aルート:相模大野駅〜麻溝台・新磯野地区〜上溝駅〜横山公園〜相模原駅

(全長12km)

Bルート:相模大野駅〜麻溝台・新磯野地区〜上溝駅〜橋本

(全長14.2km)

図12 HSSTによるルート案

 

(2) ルート案の検討

 HSST導入時のルート案(Aルート、Bルート)について市の基本ルート案(全長13.2km)との比較を含めて検討を行いました。

表3 ルート案の比較

ルート案

 長  所

 短  所

A 案

・相模大野、相模原駅と市街地との 連携軸の形成ができる

・線形に急曲線がなく、速度が出し やすい

JR相模原駅及び小田急線相模大野 との結節は高架方式となり、費用 の削減が期待できる

・将来における橋本への延伸は困難 である

・小田急線との調整が必要となる

B 案

・県の北西部への延伸が可能である

・都心への利便性が向上する

JR橋本駅及び小田急線相模大野と の結節は高架方式となり、費用の 削減が期待できる

・市の拠点をカバーしていない

・導入空間の不足する道路が多いた め街路整備費の増加が予想される

・小田急線との調整が必要となる         

市の案

・鉄道網と市の拠点、市街地の連携 軸の形成ができる

・将来の橋本への延伸が可能である

・線形に急カーブの曲線がある

・導入空間の不足する道路が多いた め街路整備費の増加が予想される

・地下部分の工事が発生し、費用の 増加が予想される

・相模原駅付近においてJRとの調 整を要する

・上溝駅では折り返し運転となり表 定速度が低下する

・上溝駅の構造が複雑になる

次項では、この二つのルート案(A,B)について事業採算性の面での検討を行います。

 

6.事業採算性の検討

 HSST導入時における事業採算性についての検討を行います。なお、収支検討は、Aルート(相模大野〜上溝〜相模原)、Bルート(相模大野〜上溝〜橋本)の2ケースについて行います

(1) 前提条件

イ.需要予測

 市の「新しい交通システムの導入検討会、検討結果(平成9年度)」によりますと、当路線におけるピーク最大断面輸送量※1は、5,000人/hとなっていますが、開業当初はもう少し低いと考えられることから、今回は半分の2,500人/hとして試算しました。

ロ.HSST−100S車両基本仕様

表4 HSST−100S車両基本仕様

車体長

(先頭車)8.5m (中間車)8.4m

車体幅

2.5m

高さ

3.6m

重量

(空車)9t/両 (満車)15t/両

定 員※2

(4両編成)194人

最高運転速度

100km/h

加速度

4.5km/h/s

減速度

(通常最大)4.5km/h/s (非常用)5.3km/h/s

最急勾配

7%

最小曲線半径

25m

            ※1
朝夕のラッシュ時等、最も込み合う時間帯における片道一時間当たりの輸送人数
                              ※2
座席および立ち席について、JISの規定により算出しました。

ハ.運行計画

表5に運行計画をまとめました。

表5 運行計画(A、Bルート)

Aルート

Bルート

輸 送 量

2,500人/h

2,500人/h

運行本数

9本

9本

運転時隔

7分

7分

路線延長

12km(16駅)

14.2km(19駅)

表定速度

35 km/h

35 km/h

必要列車本数

(180+1234)×2/420=6.7→7
7+2=9編成

(180+1460)×2/420=7.8→8
8+2=10編成

車 両 数

9×4=36両

10×4=40両

ニ.建設費の算定(平成6年度ベース)

全線複線の高架構造とし、駅は島式構造(上下線の間にホームを設置)としました。

表6 建設費(A、Bルート)

(単位:億円)

Aルート

Bルート

インフラ部計

247.6

293.4

インフラ外部計

395.9

462.1

合  計

643.5

755.5

1km当り

53.6

53.2

ホ.運営費の算出

(省略)

 

(2) 事業化シミュレーション結果

以上により収支の検討を行った結果は次の通りです。

表9 黒字転換年度(A、Bルート)

Aルート

Bルート

償却後損益

単年度

13年

13年

累 計

24年

23年

資金過不足

単年度

13年

13年

累 計

18年

18年

 

 鉄道経営においては、償却後損益の黒字転換年度が単年度で10〜15年、累計で20〜25年の間であれば、鉄道経営は良好とされています。したがって、採算性の評価は、Aルートであれば黒字転換年数が開業後13年、累計で24年と、Bルートはそれぞれ13年と23年となっており、双方とも鉄道経営は良好だといえます。

 なお、資金繰りについても単年度で8〜15年、累計で10〜20年でバランスが取れれば採算面で事業がほぼ成立するとされており、いずれのルートにおいても問題がありません。

 

7.関連法規類の整理

 事業を開始にあたりHSSTに適用される法規には「鉄道事業法」があります。また一般の道路上に鉄道施設を建設する場合、都市モノレール等は「軌道法」の適用を受けますが、HSSTに対してこの「軌道法」が適用されるかどうかは、現在、関係者間で調整が続けられております。HSSTは都市モノレール等と同様の都市交通機能を果たし、高架桁構造により専用の軌道上を走行するものでありますから、ここではHSSTに対しても適用が見込まれる都市モノレールおよび新交通システムに関連する法律等について示して行きます。

(1) 都市モノレール等の定義

イ.都市モノレールの定義

 「都市モノレール」とは、都市モノレールの整備の促進に関する法律により、次の要件をすべて満たすものと定義されています。

(イ)一本の軌道桁に跨座し、または懸垂して走行する車両によって人または貨物を運送する施設であること。

(ロ)一般交通の用に供するものであること。

(ハ)軌道桁は主として道路法による道路に架設されるものであること。

(ニ)その路線の大部分が都市計画区域内に存すること。

ロ.新交通システムの定義

 新交通システムの定義は、特に法律上の位置付けはありませんが、上記都市モノレールの定義の(イ)項を次のように読み変えたものとされています。

(イ)既存の輸送手段のパターンに当てはまらない、種々の交通手段の総称。

(ロ)、(ハ)、(ニ)は都市モノレールの定義と同じです。

ハ.道路と都市モノレ−ル等

 都市モノレ−ルは、昭和47年3月7日付け建設・運輸両省事務次官覚書により、軌道法を適用するものとされており、また新交通システムは、昭和50年12月28日付け建設省道路局長・同都市局長・運輸省鉄道監督局長覚書により、軌道法または鉄道事業法を適用するものとされ、主として道路法上の道路内に新設するものを軌道法で、その他の区間を鉄道事業法に基づき整備することとしています。こうした点から道路と都市モノレ−ルおよび新交通システム(以下「都市モノレール等」と言います)との関係は、以下のようになります。

(イ) 都市モノレ−ル等は、道路交通の補助的交通機関として道路交通の一部を分担する場合、道路行政の一環として取り扱われるべきものです。

(ロ) 路面交通のための空間と都市モノレ−ル等のための路上(ないしは地下)空間とは連続した空間を構成しており、双方の通行の安全性と構造上の安全性を確保するためには、両者を一体的に建設、管理する必要があります。

(ハ) 都市等における交通需要の増大に対処するため、道路の拡幅を行うか、高速道路を建設するか、あるいはまた高架構造として都市モノレ−ル等を建設するかは、道路あるいは都市計画において定めるべき事項であると考えられます。

 以上のように考えますと、都市モノレ−ル等の支柱、桁等のいわゆるインフラ部は、軌道である都市モノレ−ルの用に供する道路構造の一部として、路線バス専用通行帯、自動車専用道路等とともに道路の一部を構成し、あたかも、道路交通の混雑緩和のために路面電車の軌道敷を高架化したものに相当すると理解でき、道路管理者の負担において整備すべきものであると言えましょう。

(2) 都市モノレ−ル等に関する法律等

(省略)

(3) インフラ補助制度

(省略)

(4) 都市モノレール等の諸基準

(省略)

(5) 都市モノレール等の手続

(省略)

 

8.まとめ

 心豊かな人間都市、うるおいある快適環境都市、活力ある広域中核都市そして風格ある市民文化都市をその都市像として掲げる市の基本構想に沿って、私たち相模原商工会議所ではその取り組むべき方向を次のように考えました。

・ 市内のレクリエーション施設、医療保健福祉施設、教育施設等の公共施設の利便性の向上

 豊かな心をはぐくみ、生涯にわたる健康づくりを進め、あたたかい連帯感のある福祉社会を実現するために、公園や緑地等のレクリエーション施設、病院、老人施設等の医療保健福祉施設、図書館、学校等の教育施設、市役所等の公共施設の利便性向上を図ることが大切です。

・商業地域の有機的な結合による魅力ある商業都市としての発展(土地利用計画の推進)

 橋本駅周辺、相模原駅・西門の中心商業地、相模大野駅周辺の中心商業地を有機的に結び、市域の土地利用計画を推進し、全体としてより魅力あるまちづくりを実行することが重要です。

・県北部への広域的中核都市としての発展

 相模原は首都圏の主要な広域的中核都市としての機能を担ってきましたが、隣接する県北部の城山町、津久井町、愛川町方面への交通結節点としても重要な位置づけを持っており、今後益々これら地域を包括する拠点都市としての機能の充実が望まれております。

・他の公共輸送機関との乗り継ぎ利便性の確保

 新しい交通手段の導入を図る上で、在来の公共交通機関とのスムーズな乗り継ぎが出来る配慮が肝要です。

 

 上述の視点に立って、自然と調和した人間尊重の地域社会を築く中で、さがみはらの活力ある発展と住み良いまちづくりのために、JR橋本駅またはJR相模原駅と相模大野駅を結ぶ新しい軌道系交通機関の導入に向けて、真剣な取り組みに着手すべき時期に来ているものと考えます。

 すでに相模原市において、新しい交通機関の導入に向けての調査が行われ、その中でJR相模原駅から上溝駅、星ヶ丘、光が丘、相模原麻溝公園を経由して相模大野駅を結ぶルート等が示されております。常電導磁気浮上式鉄道のHSSTについては、市の調査時点では実用化の実績がないとの理由だけで候補から外されましたが、本年には2005年に愛知県で開催される万博会場へのアクセス路線に採用される見通しにあり、さらに本路線において「軌道法」インフラ補助システムとして認知される予定です。また、広島県の空港アクセス線(JR白市駅〜広島空港)でも内定していること、横浜市の運休中であるドリームランド線への免許が下りた経緯もあり、私たち相模原商工会議所としてはHSSTに着目し、その特徴を生かした導入ルート等の調査・検討を行いました。